◆舞の部屋・夜ごはん問題──視点:舞寄り タオルでほわほわになったりゃんをソファに座らせて、 舞はキッチンに立ってみたものの——すぐ固まった。 (……え、今日なに作るの? 大腸炎でも食べられるやつって、どれ? りゃんくん何なら平気?) パスタもカレーも重いし、肉もダメ。 野菜スープはあるけど、味薄いし… (うわ、恋人みたいに食事制限気にしてる自分ちょっとキモ—…いやでも普通?いやキモ…いや…) 舞の脳内は軽くパニックだった。 「まい…?」 背後でりゃんが声をかけてくる。 思わず肩が跳ねた。 「ひゃいっ!? あ、あのね、夜ごはん…どうしよっか、と思って…」 りゃんは首をかしげながら立ち上がり、 ふらっと舞のすぐそばまでくる。 「舞の作るやつでいいよ。なんでも食べるから」 その言い方が—— 優しすぎて、無防備すぎて、距離が近すぎて。 舞の頭の中で警報が鳴る。 (ちょっと待って、近い。 そういう言い方すると、もう…抱きしめていい?って錯覚するじゃん…) りゃんは一切そんなつもりなく、ただ真顔。 だから余計に危険。 そのとき、舞のなかでひそかに"暴走スイッチ"が入りかけた。 --- ◆舞の暴走、寸前 舞は喉を鳴らして息を整えた。 (だめだめ…落ち着け… ここで変なスイッチ入ったら一生後悔する… いやでも…距離が…近……) りゃんがキッチンを覗き込みながら、 「これ…野菜スープ? いい匂いする。食べたい」 もう、それだけで舞の心拍数は跳ね上がる。 (食べたいって…そんな可愛い声で言わないで…!) 舞は思わず、ぷちん、と何かが切れた。 「……りゃんくん」 「ん?」 「ちょっとこっち向いて?」 りゃんは素直に振り返る。 舞の心に"黒い衝動"がひりっと走る。 (この顔、こんな近くで見られたら…… 触りたくなるの当たり前じゃない?) 指先が勝手に動きそうになる。 頬に触れてしまいそうで、舞は自分の手を後ろでぎゅっと握った。 --- ◆追い打ち:りゃんの無自覚ワードが刺さる 「舞さ」 りゃんがふいに、少しだけ柔らかく笑った。 「…なんか今日、やさしいね」 舞の胸に雷が落ちた。 (は!? いつもだよ!? ていうかその顔でそんなこと言われたら…私のほうが爆発するっての…) りゃんは続ける。 「俺んちより落ち着くし…なんか、あったかい。 ...