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叶わなかった想い人へのラブレター

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自分が性同一性障害だと気付いたのは、小学三年生くらいだったでしょうか。

自分におちんちんがついていないことが、不思議で不思議でしょうがないと思うようになったのです。

だけど長いこと、「恋」というものがよくわかりませんでした。

恋愛の話を避け、恋愛関係のものを遠ざけて生きていました。自分には「恋」が分からなかったし、他人と対等な関係になることが苦手だったから。

男子と喋っているとき、ドキドキ、ハラハラすることがありました。それが「恋」なんだろうと思っていました。

30歳になって、セックスが何かも、恋愛が何なのかも、本で知識を身につけました。

そして初めて恋に落ちました。

恋がなんなのか、初めてわかりました。はらはらするようなドキドキではなく、みぞおちのあたりがきゅんとなって、心臓がばくばくしてしまうのですね。そして性的なことをしたいと思ってしまいました。

今まで、男性に対してドキドキしていたのは、恋ではなく、気を遣っていたからドキドキしていたんだ、と分かりました。男性に対して性的欲求を持ったことがなく、「性的欲求」が何なのかまったくピンと来てなかったのですが、あなたのことを考えるとそれがよく分かりました。

あなたは、可愛くて、綺麗で、アイドルみたいに美しいです。僕がもし女でなかったら、一言言葉を交わすことさえ難しいような人です。

でも、僕は女として生まれ、あなたと幼馴染になった。

子供の頃は、可愛いな、としか思っていませんでした。

自分が性同一性障害だと自覚したときも、ただの友達だとしか思っていませんでした。

僕は自分が女なのをいいことに、女性にちょっとしたセクハラをしたりすることがあります。例えば女友達の水着写真をせがんだり、当然更衣室でみんなの下着を見たりすることは、僕の快感でした。

でも、あなたに対してだけは、なぜかそういうことを考えるだけで、胸が締め付けられるように痛みます。ほかの人になら言えるようなことも言えなくなって、近付くことさえ、意識してしまって、できなくなってしまいました。

いつか性転換したら、あなたに告白しようと思っていたこともあった。

僕の夢は、性転換すること、そして漫画家になることでした。

そのために、たくさんたくさん努力して、全力で頑張って、そして挫折しました。

僕は「発達障害」と診断され、副腎疲労症候群になって、潰瘍性大腸炎になって、ほとんどの時間を寝て過ごしています。

仕事もできず、生活保護を待つ身になりました。

だけど僕は今幸せです。あなたとの思い出があるからです。あなたの声も、顔も、記憶のなかにあります。だからぜんぜん寂しくありません。これはアイドルに対するガチ恋のような感情かもしれません。

僕は女で良かったと思っているんです。あなたは男子が嫌いじゃないですか。美人はみんな警戒心が強いですよね。僕はこの性別のお陰で、あなたと二人っきりで遊びに行ったり、二人っきりでカラオケをしたりできたんです。僕はもしかしたらすごくしあわせ者なのかもしれないと思うほどに。男に生まれてたら、こんな思い出は作れなかった。だから感謝すらしているんです。

もし僕が男でも、あなたとは釣り合わないのだから、もしかしたら最善の関わり方ができたんじゃないかって。

毎晩、頭の中で、あなたの裸を妄想していることは、本当に申し訳ないと思っています。でも、あなたには絶対バレないようにしますから、許してください。

あと、もう僕には関わらないで下さい。僕には脳内のあなたがいるので、本物のあなたに嫌われる思い出を作りたくありません。どうかこのままあなたを心の中に飼わせてください。

高望みをしたわけではない。ただ「普通」を望んだだけだけど、叶わなかった。だから当然、あなたとの恋も叶うはずがありません。

でも、もし女でなければ、ここまで焦がれる前に諦められたかも、とも思うのです。同性だからこそあなたが近くて、こんなに意識してしまうのです。

言いましたよね

あなたが好きだと思ってたのは昔からだったと思います。ただ、恋愛に鈍いほうなので、自覚はしていませんでした。でも、なぜかあなたにだけは、ふざけたり、馴れ馴れしくできない自分がいたのを、今思い返します。

声が好きでした。目元が好きでした。

テレビの中の人ならこんなに苦しむことはないのです。あなたみたいな美人はテレビの中にいてほしい。

あなたは僕の気持ちに微塵も気付いていないでしょう。僕は自分がトランゼクシャルであることを隠していましたから。ただ、ズボンが好きで、恋愛に鈍い女性だと思っているでしょう。でも、ほんとは、あなたの声をもっと聞きたくて、あなたをもっと触りたいと思っているんです。こんなことを考えていると知られたら、あなたは絶対会ってくれないでしょう。軽蔑し、僕もほかのあなたに恋する男たちと同じように扱われるでしょう。本来、そうでなければいけないのです。なにかが歪んでいる。だから僕はこんなに苦しいんだと思う。僕は男なので、やっぱり男として扱われたいと思う自分もいるのです。

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 あなたとは幼稚園からの付き合いですね。と言っても幼稚園の頃はほとんど接点はありませんでしたね。あなたは賢くて可愛いので、目立たないようにそつなくこなせる子でした。僕はいつも叱られてばかりのやんちゃな子でした。僕は僕の世界に僕しかいないような子供でした。でも、バレンタインにクッキーをくれましたね。組の子全員に配っていたのですが、接点といったらそれくらいじゃなかったかな。僕、そのときのこと凄くよく覚えているんです。感動したんだと思います。すごく可愛い子からクッキーをもらったので、すっごくよく覚えているんです。今思うとあの時から好きなんだろうなと。この間、卒園アルバムを見たんですが、あの頃のあなたは髪を長くして、パーマもかけてたのかな?ゆるふわみたいな髪でめちゃくちゃ可愛い写真でした。

 次に再会したのは八王子の山奥の私立学校でしたね。お互い武蔵野の人間なのにどうして八王子まで通ってたのか…。僕は制服にスラックスがあったからですけど、あなたはなぜだったんですか?市立中学って、色々な事情で公立小学校をドロップアウトしたような子が多いじゃないですか。だからあなたも小学校で何かあったんじゃないかって僕は思いました。美人すぎるから妬まれたりしたのではないかと。

 あなたは顔も性格も本当に完璧で、怖いんですよね。いじめたくなるし、あらを探したくなる気持ち、分かるんです。あと声も落ち着いてて素敵なんですわ。でもそれって、分かっててやっているんでしょう?「自分は美人だから、妬まれないように優しくしなきゃ」という意思が何となくあるような気がするんです。あなた、美人なの自覚してますよね。男子と絶対に二人にならないようにしてるし、夜も絶対遅くならないようにしてる。むしろちょっと自意識過剰なくらい自覚してますよね。もしかして、何か怖いことがあったのでしょうか。美人って大変なんだろうな、とは思います。だって僕だってあなたがそんなに美人でなければもっと「友達」みたいに思えたんじゃないかって…。これについては本当にごめん。僕に非があるのです。

 あなたは多分すごく頭がいい。僕なんかじゃ分からないけど、多分僕の100歩くらい先を読んで暮らしているのではないでしょうか。だから自分の影響力について物凄く分かってるし、それを生きづらいと感じてる。美人なうえ、頭が良すぎて、世界が狭く感じるのかな、と思う。だからいつもニコニコ愛想笑いをして、八方美人で、のらりくらりかわして生きているのかなって思う。あなたは凄く耳が良いでしょう。男性声優が大好きだし、あと、嵐も好きだよね。美人で頭も良くて感性も鋭いから、イケメンとの恋ばかり夢想しているよね。うん、僕もあなたにはイケメンがお似合いだと思うよ。だけど現実には、顔のいい男は傍若無人であなたに見合う性格の男はいないかもしれませんね。ああ~、僕がイケメンだったら、絶対アプローチするのに。もし僕が男で、あなたのお眼鏡に適う顔と声なら、絶対幸せにする自信があるのに。美人すぎて引きこもってばかりいるから出会いも少ないし、すごくいい男性との出会いはなかなかないかもしれないね。もうあなたも30歳なのだから、そろそろ婚活をしたほうが良いんじゃないかと…。僕は思う…。僕があなたに見合う男を見つけて来てあげようか!?

ほいくし

 それで中学・高校時代は少し接点ができたね。あなたがオタクになってたから。あなたはイナゴ系のクソデカ感情系オタクになってた。僕はアニメや漫画のことは詳しくなかったけど、発達障害が社会で市民権を得るには、その頃はまだ「クリエーター」という道しかなかった。『ポケモン』や『ドラえもん』のような漫画を作って食べて行くんだと、その頃の僕の頭にはそれしかなくて。あなたはそれを応援してくれましたね。僕の作品を読んでくれましたね。その頃の僕はあなたのことを「この人は読むばっかりでなんで作ろうとしないんだろう」なんて思ってましたけど、本当に賢い人は作家なんてバカな夢は持たないんですよね。ちゃんと社会生活送れるから。

 それからあなたは短大に行ってさらりと保育士になってそつなく働き始めた。僕は一度あなたに、「下の兄弟が多くて幼稚園の思い出が多いから保育士になったの?」と聞いたけどそれは否定しましたね。あなたは長女だから、たぶん幼少時代のほとんどを「幼稚園」を身近に育ったんじゃないかな?僕は幼稚園なんて卒園すれば二度と行かないけど、あなたの場合下に弟妹が2人もいるからしょっちゅう幼稚園に行って、弟妹に対して幼稚園の先生のまねごとみたいなこともしてただろうし、そこから幼稚園の先生に憧れたんじゃないかなって思ったけど、それは否定したよね。あと、「下の兄弟が多いから我慢することも多かったんじゃない?」って聞いたら、それも「うちはけっこう好きにしてたよ」と言ってた。どこまで本当か分からないけど、でもやっぱり普通の子、とくに僕みたいな奔放な子に比べたらすごく我慢の多い環境だったんじゃないかなと思う。あと毎日ファミレスって言ってたのはカルチャーショックだった。まあ、そりゃそうだ。毎日5人ぶんの飯作るの、お母さん大変すぎるし。うちはファミレスとか5年に1回行くか行かないかって感じで。お祝い事で行く料理店は別としてね。

 そう言えば数年前に聞いたんですけど、小さい子は美人の保育士とブスの保育士だと言う事の聞きやすさが違うんだって。自分自身がどうだったか全く覚えがないんだけど、だから保育士は美人だとすごく重宝されるんだって。あなたも就活はほぼ一発合格だったね。僕はずっと「なんでその美貌を生かしてアイドルとかにならないんだろう」と思ってたけど、生かしてたことをあとで知りました。賢すぎる。芸能人になって自分を売るのはバカのする事だからな…。

 それで僕の方はと言うと、その「バカ」だったので、とにかく漫画を描いて描いて描きまくって、とにかく在学中にデビューしなければニートになってしまうと言う焦りで、副腎疲労症候群になり、月経困難症になり、若年性更年期障害になり、自律神経失調症になり、パニック障害になり、潰瘍性大腸炎になり、また、発達障害があることも分かって、人生はどん底でした。高校時代の友達は、みんなブロックされたり既読無視されたりして、返信が来るのがあなただけだったんです。それがどんなに僕の心に影響を与えたか、あなたは分かってない。中途半端な優しさはやめろと、だれかあなたに教えてあげてほしい。あなたから返事が来るたびに、僕は救われたような、怖いような気持ちになる。病気だから、仕事もできず、日がな一日寝ているしかない。そんなときに考えるのはあなたのことばかりだ。あなたのことを考えると、もっと優しくしてほしいと思うのと理性が喧嘩をして、ものすごくつらい気持ちになる。それが性欲と結びつくのにそう時間は掛からない。発病してから何度か二人で会ったけど、昔のように落ち着いて話すことができなくて、意識してしまって、自分のことばかりになって、あなたとはもう「友達」には戻れないと分かりました。しかも、あなたはちょっと思わせぶりな発言をする。いや、僕が勝手にそう変換しているだけなんだ。僕はもうだめなんだ。

 あなたにとっては、ただ嫌われないように当たり障りのない友達付き合いを続けているつもりなんだろうけど、そのせいで僕がどんなに翻弄されているかあなたは分かってない。もう、こんなことならすっぱりLINEの返事もしないでほしい。ほかの人はそうしてる。なぜあなただけ返信が来続けるのか?あなたは豊かすぎている。恵まれすぎている。そして僕は惨めすぎている。もう昔の僕のように、あなたに誕生日に絵も描いてあげられないし、京都のお土産も送れない。もう僕と付き合っても何も見返りはない。どうかそのことに早く気づいて。恨まないから。あなたを個人的に恨まないから。あなたが優しいことは、もうじゅうぶん分かったからもう恨まない。僕に恨まれるのが怖いんだよね。だって僕にはあなたしかいないから。もしあなたからの返事もなくなったら、僕は京アニに火を付けに行くかもしれない。総理大臣を殺しに行くかもしれない。そうなる可能性だってあったし、そうならなかったのはたぶん、あなたのおかげです。でも、きっと大丈夫だから、どうか僕を見捨てて、嫌ってください。なぜかふしぎとあなたにならそれをされても苦しくないと思える。レベル差がありすぎるからかな。それとも僕は、返事が来ても来なくても相手を恨むどうしようもない人間なんだ。

 あと、「何時まででも平気」と言うのはやめて下さい。夜のお誘いに聞こえるのでやめてください。お願いします。

 最後に、佐藤さん、本当にごめんね。性的な目で見てしまって本当にごめん。あなただって美人に生まれたくて生まれたわけじゃないのに、男と言う男からこんな目で見られるのがきっと辛いだろうことも分かってるのに、本能がそれを許さなくて、本当にごめんなさい。「友達」をできなくて、本当にごめんなさい。発達障害で本当にごめんなさい。あなたの期待に「友達」として応えられなくて、本当にすみませんでした。

 あなたは僕のことを少なからず気に入ってくれていたのは分かっています。それは、きっと、あれですよね。僕が女だからだし、あなたを「ライバル視」しないからですよね。ふつうの女性には妬まれるし、男性には性的な目で見られるから、僕みたいにマンガの話ばかりする女性とは話しやすかったんですよね。しかもあなたの趣味を否定しないし。分かります。それは分かります。僕だって漫画は好きだし、あなたとそういう話ができるのは楽しいんですが、30歳になって、僕にも恋愛感情が生まれてしまって、それが全ての元凶なのは分かってます。あなたともっと漫画の話がしたかった。あわよくばもっといっしょに創作したりしたかった。…でも、もうそれは叶わないんです。60歳になって、あなたがしわくちゃのおばあちゃんになったら、また前のように戻れるでしょうか?まあ、そのとき隣にいるのは、僕ではないのですが。

 あなたは僕がどれだけ惨めな人間かを理解できていない。

 そもそもこれもそれもすべて僕が女だからいけないのだ。