異世界から勇者「カズキ」が現れ魔王を討ち取り、世界を平和に導いたのはもう140年も前のこと。
それ以降、カズキを始めとする様々な転移者のおかげでこの国、オルタナは目を見張るほどの進歩を遂げ、もはや一家に一台の電化製品は当たり前の時代となった。
そして、新たな問題が勃発した。
「転移者狩り」である。
異世界転移者の持つ破格の知識や技術、そして年々増え続ける転移者の数を恐れた国王マチネフ三世によって敷かれた命令で、転移者は命の保証をされない、転移者を匿った者もまた然りというものである。
(だいたい、オタクばっかり転移するからこうなるんだ。政治家や文系が転移してくれば、もっと政治体制も整っただろうに、オタクなんてのは、権力を敵に回すバカが多いから)
そうひとりごちたのは、渡井ミノル――今は「マーカス」という名の転生者だ。
紺碧の髪に藍色の瞳――どこからどう見ても異世界の人間だ。転生者と分かるはずがない。
だが、日本の知識を持つと知られれば、彼もまた騎士や賞金稼ぎ、はたまた盗賊たちに命を狙われる運命なのである。
マチネフが恐れているのは転移者であり、転生者であり、すなわち「地球」の文明そのものなのだから。
カランと、「マーカスのなんでも屋さん」のドアの開く音がする。いらっしゃいませ、と彼がその方を見ると、そこにいたのは――
(げ。騎士かよ)
すらりとした長身に、高価な白磁の鎧。兜から覗く精悍な
転移者を探している
店を営んでいる
地球の話を聞かせてくれないか?
じ、女性だったんですか。